施設の利用者・出店者向け
商業施設が閉館・建て替えするとき、テナントと利用者はどうなる?公的な確かめ方と契約の基本
公開 2026年10月22日(木) 文:閉店ナビ編集部
ショッピングセンターや駅ビル、百貨店などの大きな施設では、全館の閉館だけでなく、建て替えや、一部を閉じながらの大規模な改装もよく行われます。施設の動きは、通っている利用者にも、そこに出店している事業者にも影響します。この記事では、施設の閉館を公的な情報で確かめる方法と、利用者・出店者それぞれが確認しておきたいことをまとめました。
まず確認したいこと
- 閉館か、建て替えか、改装か:施設の公式発表で、全館を閉じるのか、いつ再開する予定かを確認する
- 利用者は手元の券とポイント:施設の商品券・ポイント・駐車サービスの扱いを、告知と規約で確認する
- よく行くお店の移転先:施設の案内と、各店舗・運営会社の発表を確認する
- 出店者は契約の種類:普通の借家契約か、定期建物賃貸借(定期借家)かを契約書で確認する
- 出店者は終わり方の条件:通知の時期、原状回復の範囲、敷金・保証金の返還について、契約書と特約を確認する
閉館・建て替え・改装の違い
施設の「閉館」という言葉は、いくつかの違う動きをまとめて指すことがあります。
- 全館の閉館:施設としての営業を終えます。建物が取り壊されたり、別の用途に変わったりします。
- 建て替え:いったん閉館して建物を建て直し、数年後に新しい施設として開業します。以前のテナントが戻るとは限りません。
- 一部を閉じての改装:施設は営業を続けながら、一部のフロアや区画を閉じて工事をします。工事の間、一時休業するお店や、別の場所に移るお店、そのまま閉店するお店が出ます。
同じ施設の中でも、お店によって「閉店」「一時休業」「移転」と扱いが分かれます。閉店ナビの施設ハブ(ラゾーナ川崎プラザの例)では、大型施設の閉店・休業・再開を時系列でまとめています。
閉館を公的な情報で確かめる方法
施設の閉館は、まず施設や運営会社の公式発表で確認します。それに加えて、大きな店舗には法律にもとづく届出と公告の仕組みがあり、公的な裏付けとして使えます。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)の届出
建物の中の小売店舗の面積が合計1,000㎡を超える店舗は、大規模小売店舗立地法の対象です。新しく開くときや、面積・営業時間などを変えるときに届出が必要で、店舗面積の合計を1,000㎡以下にするとき(廃止を含む)にも届出が必要です。廃止などの届出を受けた自治体は、その旨を公告します。
- 届出先:神奈川県では、横浜市・川崎市・相模原市にある店舗はそれぞれの市が、それ以外の市町村にある店舗は県が届出を受け付けています。
- 公開されている情報:県は届出の状況を四半期ごとにまとめて公開しています。横浜市・川崎市・相模原市も、届出の状況や公告をホームページに載せています。
- 注意点:廃止の届出は、閉店の後に出されることもあります。また、県のまとめは公開までに時間がかかります。届出は「閉館したことの裏付け」には使えますが、閉館を前もって知る手段にはなりません。
耐震診断の結果の公表
昔の耐震基準で建てられた大きな建物のうち、不特定多数の人が使う一定規模以上のもの(店舗なら3階建て以上で、床面積の合計5,000㎡以上など)は、耐震診断と結果の報告が義務付けられています。結果は自治体が公表しており、耐震改修や建て替えの予定が書かれていることもあります。神奈川県内では、横浜市・川崎市・相模原市などは各市が、それ以外は県が公表しています。
ただし、公表されているのは診断の結果と予定で、閉館の決定ではありません。施設の今後を知る手がかりの一つとして見るのがよいでしょう。
利用者が確認しておきたいこと
施設の商品券・プリペイドカード
施設の共通商品券やギフトカード、チャージして使うカードなど、お金を払って買ったものは、多くが資金決済法の「前払式支払手段」にあたります。発行している会社が、施設の閉館などで発行の業務の全部や一部をやめるときは、残高を払い戻す手続きをとる決まりがあります。
- 払戻しをすることと、60日以上の申出期間は、新聞・官報・電子公告のいずれかで知らされ、店頭にも掲示されます。期間内に申し出ないと、この手続きでの払戻しは受けられません。
- 払戻し手続き中の発行者の一覧は、金融庁のホームページで確認できます。
- 期間が過ぎた券でも、捨てずに発行者へ問い合わせるよう金融庁は呼びかけています。
発行から6か月以内しか使えない券など、払戻しの仕組みの対象外になるものもあります。詳しくは閉店・倒産したお店のポイント・商品券・予約はどうなる?で解説しています。
ポイント・駐車サービス
施設独自のポイントや、買い物で受けられる駐車料金のサービスの扱いは、それぞれの規約と施設の告知で決まります。閉館や改装の告知が出たら、ポイントの有効期限と、系列のほかの施設で使えるかを確認しておきましょう。
よく行くお店の移転先
テナントの移転先や再開の予定は、施設の案内のほか、各お店や運営会社の発表で知らされます。改装後に戻るのか、近くの別の場所に移るのか、閉店するのかはお店ごとに違うため、気になるお店は個別に確認するのが確実です。閉店セールを利用するときは、閉店セールで知っておきたい返品・保証・表示の注意点もご覧ください。
出店している事業者が確認しておきたいこと
施設のテナントは、多くの場合、施設の所有者や運営会社と建物の賃貸借契約を結んでいます。閉館や建て替えのときに何が起きるかは、その契約が「普通の借家契約」か「定期建物賃貸借(定期借家)」かで大きく変わります。
| 確認すること | 普通の借家契約 | 定期建物賃貸借(定期借家) |
|---|---|---|
| 期間が終わったとき | 貸主が終わらせたい場合でも、正当な理由がなければ更新される | 更新されずに終わる(再契約するかは話し合い) |
| 貸主からの通知 | 更新しない通知は、期間満了の1年前から6か月前まで | 期間1年以上の契約では、期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知する |
| 貸主からの解約の申入れ | 期間の定めがない契約や、中途解約の条項がある場合、貸主からの解約の申入れは、申入れから6か月で終了。正当な理由が必要 | 契約の特約による(貸主から途中で解約できる特約が有効かは、専門家に確認を) |
| 契約の条件 | 特になし | 書面(電磁的記録を含む)での契約と、契約前に更新がないことを書面で説明することが必要 |
普通の借家契約の場合
借地借家法では、貸主が更新を断ったり、解約を申し入れたりするには「正当な理由(正当事由)」が必要です。正当事由があるかは、双方がその建物を使う必要性、これまでの経過、建物の利用状況や老朽化などの現況、立ち退きと引き換えに支払う金銭(いわゆる立退料)の申出などを総合して判断されます。期間満了の1年前から6か月前までに更新しない通知がなければ、契約は同じ条件で更新されたものとみなされ、更新後は期間の定めがない契約になります。
定期借家の場合
定期借家は、期間が終われば更新されずに終わる契約です。有効になるには、書面で契約することと、契約の前に「更新がなく、期間満了で終わる」ことを書いた書面を渡して説明することが必要で、説明がなかった場合は「更新しない」という特約が無効になります。期間が1年以上の契約では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知する必要があり、通知が遅れた場合は、通知から6か月がたつまで終了を主張できません。
事業用の建物では、当事者が合意すれば、普通の借家契約を解約して定期借家を結び直すこともできます。過去に契約を切り替えたことがある場合は、今の契約がどちらなのかを改めて確認しておきましょう。
原状回復と敷金・保証金
民法では、借りた人は退去するとき、借りた後に生じた損傷を元に戻す義務(原状回復)を負いますが、通常の使い方による傷みや経年による変化は除かれます。また、名目を問わず家賃などの支払いを担保するために預けたお金は「敷金」にあたり、契約が終わって建物を返したときに、未払いの分を差し引いた残りが返されます。これらは2020年4月施行の民法改正で、条文にはっきり書かれました。
ただし、店舗の契約では、内装や設備を取り除いて引き渡す範囲など、原状回復について細かな特約が結ばれていることがあります。退店にかかる費用は特約によって大きく変わるため、契約書と特約を早めに確認し、内容に疑問があれば弁護士などの専門家に相談してください。
閉店ナビでの扱い
閉店ナビでは、大型施設の閉館・休業・再開を、施設の公式発表や自治体の公表資料で確認できたものを「一次確認済み」として掲載しています。施設全体の動きは施設ハブに、施設内の個々のお店は閉店カレンダーにまとめています。掲載内容の誤りや、新しい情報はお問い合わせからお知らせください。
参考にした公的情報
- 大規模小売店舗立地法について/大規模小売店舗立地法の解説(経済産業省)
- 大規模小売店舗立地法の概要/届出等の状況(神奈川県)
- 大規模小売店舗立地法(横浜市)/大規模小売店舗立地法の届出(川崎市)/大規模小売店舗立地法の届出状況(相模原市)
- 耐震診断が義務付けられている建築物の耐震診断結果等の公表について(神奈川県)
- 耐震診断義務付け建築物に係る耐震化の促進について/定期借家制度のパンフレット(国土交通省)
- 2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります(法務省)
- 商品券(プリペイドカード)の払戻しについて/まだ使える?あなたの商品券(ポスター)(金融庁)/前払式支払手段発行者の払戻手続について(東北財務局)
- 大規模小売店舗立地法/借地借家法/民法/資金決済に関する法律(e-Gov法令検索)