閉店・閉館・倒産情報の地域データベース 更新 2026-10-22

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取引先が倒産したときにやること売掛金の回収・相殺・資金繰りの手順

公開 2026年10月22日(木) 文:閉店ナビ編集部

取引先の倒産は、ある日突然、弁護士からの通知や報道で知ることがほとんどです。最初の数日は、売掛金がいくら残っているか、出荷を止めるべきか、自社の資金繰りは大丈夫かと、判断することが一度に押し寄せます。この記事では、中小企業の経営者や経理・営業の担当者に向けて、最初にやることを順番に整理しました。

最初の1週間でやること

  1. 事実を確かめる:官報、裁判所や弁護士からの通知、会社の公式発表で、手続きの種類と日付を確認する
  2. 取引を止める:掛けでの出荷・納品をいったん止め、続けるなら前払いや現金取引に切り替える
  3. 債権と債務を洗い出す:売掛金・手形・保証金などと、相手への買掛金を一覧にし、契約書や請求書を集める
  4. 商品を勝手に引き揚げない:取り戻せる権利があっても、管財人や代理人の弁護士を通して進める
  5. 相殺と債権届出の期限を確認する:通知書に書かれた期限までに、必要な手続きをする
  6. 資金繰りの手当てをする:取引銀行に早めに相談し、経営セーフティ共済や公的な融資制度を検討する

まず事実を確かめる

「倒産」は、法律で一つに定められた言葉ではなく、会社が借金を払えなくなった状態を広く指す言葉です。実際には、裁判所を通す法的整理と、裁判所を通さずに債権者と話し合う私的整理に分かれ、どちらなのかによって、債権者としてやることが変わります。

手続き会社のその後債権者から見たポイント
破産財産をお金に換えて配当し、会社はなくなる破産管財人が財産を管理する。配当を受けるには債権届出が必要
民事再生事業を続けながら、借金を減らして返す計画を立てる手続き前の債権は再生計画に沿って減額されることが多い。手続き開始後の取引代金は、原則として計画とは別に支払われる
会社更生主に大きな株式会社が、管財人のもとで再建を図る担保を持つ債権者も手続きの中で扱われる
特別清算解散した株式会社が、裁判所の監督のもとで清算する協定案への賛否を求められることがある
私的整理弁護士などが債権者と個別に話し合うまずは弁護士から「支払いを止める」旨の通知(受任通知)が届くことが多い

確かめる方法は次のとおりです。

  • 官報:破産や民事再生の開始決定は官報に掲載されます。官報は2025年4月から電子化され、官報発行サイトで発行から原則90日間は全文を無料で読めます。
  • 裁判所からの通知:債権者として把握されている会社には、裁判所や破産管財人から「破産手続開始通知書」などの書類が郵送されます。
  • 代理人の弁護士からの通知:申立ての前に、会社の代理人の弁護士から通知が届くことがあります。手続きの見込みと連絡先が書かれているので、必ず保管します。
  • 会社の公式発表:ホームページでのお知らせや、取引先あての文書です。

なお、東京地方裁判所の案内では、破産手続の内容について電話での問い合わせには答えないとしています(神奈川県内の会社の事件は、主に横浜地方裁判所が扱います)。事件番号などを知りたいときは、まず官報で確認するのが近道です。報道や情報サイト(閉店ナビの倒産一覧も含みます)は手がかりとして使い、同じ名前の別の会社と取り違えていないかを、所在地や法人番号で必ず確かめてください。

取引を止め、出荷と納品を見直す

倒産を知った時点で、新しい掛け(後払い)での出荷や納品は控えるのが基本です。すでに配送中の商品や、受注済みの案件があれば、社内で一覧にして、どこまで納めるかを決めます。ただし、契約で納品の義務を負っている場合は、一方的に止めると契約違反を争われるおそれがあるため、次の点に注意してください。

  • 継続して納める契約:原材料や部品などを継続して供給する契約では、申立て前の代金が未払いであることを理由に、手続き開始後の供給を断ることはできません(破産法第55条、民事再生法第50条)。
  • お互いにまだ果たしていない契約:管財人や再生手続中の会社は、契約を解除するか続けるかを選べます。相手方の側からも、期間を定めて、どちらにするかの回答を求めることができます(破産法第53条、民事再生法第49条)。
  • 破産の場合は、多くの場合、事業はすぐに止まります。新しい取引の依頼が来ても、破産管財人に確認してから対応します。
  • 民事再生の場合は、事業が続くため、取引の継続を求められることがあります。手続きが始まった後の取引で生じた代金は、原則として再生計画とは別に支払われますが、申立てから開始決定までの間の取引は扱いが異なることがあります。続けるときは、前払いや現金での取引、支払いの間隔を短くするなど、条件を見直してから応じると安全です。

債権と債務を洗い出す

次に、相手に対して持っているお金の権利(債権)と、相手に払う予定のお金(債務)を一覧にします。この一覧が、相殺や債権届出、資金繰りの相談のすべての土台になります。

区分主なもの
自社の債権売掛金、受取手形、電子記録債権、未収入金、前渡金、差し入れた保証金・敷金、貸付金
自社の債務買掛金、未払金、預かっている保証金
そのほか相手の借入れの保証人になっていないか、相手に貸している設備や預けている商品はないか

あわせて、契約書、発注書、納品書、受領書、請求書、やり取りのメールを集めておきます。債権届出のときに証拠として写しを添えるほか、契約書には次のような大切な取り決めが書かれていることがあります。

  • 期限の利益の喪失:相手の信用に問題が起きたとき、支払期日前でもすぐに全額を請求できるという取り決め
  • 所有権の留保:代金を全額受け取るまで、商品の所有権は売り手に残るという取り決め
  • 相殺の予約:一定の事態が起きたら、互いの債権と債務を差し引きできるという取り決め

「相手が民事再生などを申し立てたら契約を解除できる」という取り決めがあっても、会社更生や民事再生の手続きでは、その効力を否定した最高裁判所の判例があります。契約書の条項だけで判断せず、金額が大きいときは弁護士に確認してください。

納めた商品を勝手に引き揚げない

代金をもらっていない商品が相手の倉庫や店舗にあると、すぐに引き取りたくなります。しかし、勝手に持ち出すと、損害賠償を求められたり、刑事上の問題になったりするおそれがあります。破産手続が始まった後は、会社の財産を管理する権限は破産管財人だけにあるため、相手の社員が了承しても引き揚げは認められません。申立ての前後に引き揚げた場合も、後で破産管財人などから無効を主張(否認)されることがあります。

そのうえで、商品の種類や取り決めによっては、次の権利を使える場合があります。

  • 取戻権:委託販売の商品や、預けているだけの物など、もともと自社のものである物は、返すよう求めることができます(破産法第62条、民事再生法第52条)。
  • 担保としての権利(別除権):代金を払い終えるまで所有権を売り手に残す「所有権の留保」や、売った商品から優先して回収できる「動産売買の先取特権」は、担保に近い権利として扱われ、手続きの外で行使できる場合があります。所有権の留保は、手続き開始の時点で登録などの対抗要件を備えていることが必要とした最高裁判所の判例があります。

いずれも、破産管財人や会社の代理人の弁護士に連絡し、手続きを通して進めるのが原則です。

相殺できるか確認する

相手に払う予定の買掛金などがあれば、自社の売掛金と差し引きする相殺によって、実質的に回収できる場合があります。配当を待つよりも確実なことが多いため、最初に検討したい方法です。

  • 破産:破産手続が始まった時点で互いに債権と債務があれば、下の相殺禁止に当たらない限り、手続きによらずに相殺できます(破産法第67条)。ただし、破産管財人から期間を定めて「相殺するかどうか」の回答を求められ、その期間内に答えないと相殺できなくなる場合があります(破産法第73条)。
  • 民事再生:相殺できるのは、債権届出の期間が終わる前に相殺できる状態になっていて、その期間内に相殺の意思を伝えた場合に限られます(民事再生法第92条)。期限を過ぎると相殺できなくなるため、特に注意が必要です。支払期日がまだ来ていない売掛金でも、契約に「申立てがあれば期限の利益を失う」という取り決めがあれば、すぐに相殺できる状態になりやすくなります。
  • できない場合:相手が支払いを止めたことなどを知った後に、新たに負った債務や取得した債権は、相殺が禁止されることがあります(破産法第71条・第72条、民事再生法第93条・第93条の2)。

相殺するときは、破産管財人や再生手続中の会社に対して、相殺する金額と対象の債権・債務をはっきり書いた書面で伝え、届いた日を証明できる方法(内容証明郵便など)で送るのが一般的です。

債権届出を期限までに出す

相殺で回収しきれない債権は、裁判所の手続きの中で債権届出をして、配当や再生計画による支払いを受けることになります。

  • 破産:破産手続開始通知書と一緒に届く債権届出書に記入し、証拠書類の写しを添えて、通知書に書かれた提出先(破産管財人あてのことが多い)へ期限までに届くように送ります。期限までに出さないと、配当を受けられないことがあります。通知書が届かないときは、官報で事件を確かめたうえで、破産管財人に連絡して書類を受け取ります。
  • 民事再生:届出期間内に、通知書に書かれた方法で再生債権を届け出ます。届け出なかった債権は、原則として再生計画による支払いを受けられなくなります。その後、再生計画案への賛否を書面などで求められます。少額の債権は、事業の継続に必要な場合などに、裁判所の許可を得て先に支払われることがあります(民事再生法第85条第5項)。

東京地方裁判所の案内では、破産の債権者集会への出席は任意で、欠席しても配当で不利になることはないとしています。状況を知りたいときは、破産管財人に問い合わせることができます。

資金繰りの手当てをする

売掛金が入らないと、自社の支払いが苦しくなります。取引銀行には、影響額と今後の見通しを早めに伝えて相談してください。あわせて、取引先の倒産に備えた公的な制度があります。

制度使える主な条件内容
経営セーフティ共済
中小企業倒産防止共済(中小機構)
加入から6か月以上たってから取引先が倒産し、それまでに掛金を6か月分以上納めていること。倒産(破産などの申立て、弁護士からの支払停止の通知、手形の取引停止処分など)が起きた日から6か月以内に請求すること回収が難しくなった売掛金などの額と、掛金総額の10倍のいずれか少ない額まで、無担保・無保証人・無利子で借りられる(上限8,000万円)。借りた額の10分の1にあたる掛金は戻らなくなる
セーフティネット保証1号
中小企業庁・信用保証協会
倒産した会社が中小企業庁の「1号指定事業者」であること。その会社への売掛金などが50万円以上、または取引の割合が20%以上であること本店のある市区町村で認定を受けると、信用保証協会の保証付きの融資を通常とは別の枠で申し込める
取引企業倒産対応資金
日本政策金融公庫(国民生活事業)
次のいずれかに当てはまること:倒産した会社への売掛金などが50万円以上、取引の割合が20%以上、倒産した会社の債務を保証している、など運転資金を別枠3,000万円まで。返済期間は10年以内(うち据置期間3年以内)

経営セーフティ共済は、倒産が起きる前に加入している会社だけが使える制度です。セーフティネット保証1号は、主に規模の大きな倒産が指定の対象になるため、まず指定事業者の一覧に載っているかを確認します。いずれも審査があり、条件を満たしても希望どおりに借りられるとは限りません。最新の条件は、各機関の案内でご確認ください。

税務の処理(貸倒れ)を確認する

回収できなかった債権は、条件を満たせば、法人税の計算で損失(貸倒損失)として扱えます。国税庁は、主に次の3つの場合を示しています。

  • 債権が切り捨てられた場合:民事再生の再生計画の認可などで切り捨てられた金額
  • 全額が回収できないことが明らかになった場合:相手の資産や支払能力から見て全額を回収できないことが明らかになったとき。担保があるときは、担保を処分した後
  • 取引停止から1年以上たった場合:継続して取引していた相手の売掛金で、取引を止めた時と最後に支払いを受けた時の、遅いほうから1年以上たったとき。売掛金から備忘価額(帳簿に残す最低限の金額)を差し引いた額が対象です。担保がある売掛金や、一度きりの取引の売掛金には使えません

このほか、資本金1億円以下の中小法人など(大きな法人の完全子会社などを除く)は、事業年度末までに取引先に破産や民事再生の申立てなどがあれば、その年度に貸倒引当金を計上できる制度があります。計上できるのは、相殺できる買掛金や、担保などで回収できる見込みの額を除いた金額の50%までです。消費税についても、売掛金が貸倒れになったときに、その分の消費税額を差し引ける仕組みがあり、貸倒れの事実を示す書類の保存が必要です。どの時点で、どの方法で処理するかは会社の状況によって変わるため、顧問の税理士に確認してください。

社内と自社の取引先への対応

  • 社内:経理、営業、物流の担当者で情報をそろえ、相手からの問い合わせ窓口を一本にします。
  • 自社の取引先や金融機関:影響が大きい場合は、自社の支払いに問題がないことや、対応の見通しを先に伝えておくと、無用な不安を防げます。
  • 情報の扱い:確認できていない情報を社外やSNSで広めると、取り違えなどで別の会社に迷惑をかけるおそれがあります。

専門家に相談するタイミング

次のような場合は、早めに専門家に相談してください。期限のある手続きが多いため、迷ったら先に相談するほうが安全です。

  • 債権の額が大きい、または担保・所有権の留保・保証が関係している(弁護士)
  • 相殺できるかどうかや、相殺の時期に迷っている(弁護士)
  • 貸倒れの処理の時期や方法を決めたい(税理士)
  • 自社の資金繰りの見通しを立てたい(取引銀行、商工会議所・商工会などの経営相談窓口)

日頃からできる備え

  • 取引先ごとに、売掛金の残高と取引の割合を定期的に確認する
  • 契約書に、支払条件、期限の利益の喪失、所有権の留保、相殺の取り決めを入れておく
  • 特定の取引先への依存が大きい場合は、経営セーフティ共済への加入を検討する
  • 地域の倒産情報に目を配る(閉店ナビでは、神奈川県内の法人の倒産を倒産一覧で毎朝更新しています)

参考にした公的情報

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